詰碁における石がどれだけ生きているかの指標の付け方の提案 ~~後編~~

 前編の続きです。少し複雑な問題に応用してみるのを実践してみます。この記事を理解できたらどのような場面でも自分で生き度を計算できると思います。
 まずは一手ヨセコウの問題です。
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 xが初期状態です。
 また、前回の記事にあったように、本コウの場合、生きる側の取り番だと生き度が \frac{2}{3}、殺す側の取り番だと生き度が \frac{1}{3}ということは既知のものとして使います。
 また、グラフの中に二か所xが現れていますがこれらは厳密には状態が違います。盤面は同じですが、根のほうは手番が決まっておらず、葉のほうは次は黒番です。しかし、手番が決まっていないときは次に黒が打つ確率が \frac{1}{2}という仮定と、コウ材がある確率は \frac{1}{2}という仮定により、全く同じ状態とみなすことができます。*1
 よって、グラフより
 黒番のとき・・生き度は \frac{8}{9}
 白番のとき・・生き度は \frac{2}{3}
 この状態のとき・・生き度は \frac{7}{9}

 次に二段コウの問題です。
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 xが初期状態です。
 グラフより、
 黒番のとき・・生き度は 1
 白番のとき・・生き度は \frac{1}{2}
 この状態のとき・・生き度は \frac{3}{4}

 最後に万年コウの問題です。これは難しいです。
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 普通に計算すると右のグラフのようになりますが、実際に数値を書き込んでみるとお互いに自分に不利になる手ばかり打っていることになり仮定に反します。よって、条件を満たすように考える必要があります。
 まず、万年コウの場合、最終的には殺す側または生きる側が本コウを仕掛けるため生き度は [\frac{1}{3}, \frac{2}{3}]の範囲にあるはずです。生き度が [\frac{1}{3}, \frac{2}{3}]の範囲にある場合、生きる側としては本コウを仕掛けると生き度が \frac{1}{3}となってしまうため、コウを仕掛ける理由はありません。また、殺す側としても本コウを仕掛けると生き度が \frac{2}{3}となってしまうため、コウを仕掛ける理由はありません。しかし、このままお互いにコウを仕掛けないまま終局するとこの石は生きてしまい、生き度が1になります。よって、どこかで殺す側が本コウを仕掛けることが必須となります。よって、生き度は \frac{2}{3}となります。この考え方からわかるように、黒番であっても白番であっても、この状態においてであっても万年コウの生き度は \frac{2}{3}です。
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 このような1マス空いている万年コウであっても上記の考察より生き度は常に \frac{2}{3}です。

おわりに

 これでこの記事は一通り終わりです。実際にいろいろな場面の生き度を計算してみると、僕が普段から抱いている感覚とそこまでずれていなかったためこれはある程度妥当なのではないかということで公開してみました。興味深いと思ったらSNSなどで拡散してもらえると喜びます。ここは違うんじゃないかと思う場所や疑問点があったら質問してください。
 最後に一問。「n手ヨセコウの生き度を計算しなさい。」

*1:これは少しわかりずらいかもしれませんが、実際に自分でグラフを描いてみたりすると納得できると思います